『ハンターハンター』についての所感  メルエム以後、非論理はいかに克服されるのか

「基本的には漫才ですよ。(中略)その中でキャラ同士がそいつらしさを守った上での最良の一手をボケツッコミみたいな感じでバンバンかぶせていくんです。そんで論理展開させてってー、最後は主人公がそのずっと上をゆく解(オチ)を打ち出す! そんな感じです」

 

これは村田雄介先生の描かれた「ヘタッピマンガ研究所R」の中の、冨樫義博へのインタビューの一節です。

 

この記事では、この冨樫先生の言葉を起点に、ハンターハンターについて普段考えてることを書いてみようと思います。

 

※もちろんネタバレあり

 

始めに、ハンターハンターは徹底的に論理的で、これ以上ないほどにリアリティラインの高いフィクションであるという話を、色々と例を挙げながらしたいと思います。

 

 

まず、冒頭で紹介したインタビューの内容ですが、これってそのまんまヘーゲルの弁証論ですよね。

 

弁証法 - Wikipedia

 

ざっくり説明すると、ある命題(テーゼ)とそれに対立する命題(アンチテーゼ)から、両方のいいとこどり(アウフヘーベン)をして、より高次元な解答(ジンテーゼ)を導き出そうという法則・方法論のことです。

 

ハンターハンター世界では、キャラクターはしょっちゅう2択を迫られ、ジンテーゼを導き出せたキャラクターは成功し、逆にどちらかを選択してしまったキャラクターは失敗します(基本的にはですが)。

 

そして上記のインタビューからも分かる通り、物語上最もアウフヘーベンするキャラクターはゴンです。そんな彼を、目標であるジンがある種のメタプレイヤーとして導く、という構図になっています。

 

ですのでジンという名前は、

①復活を象徴するジンカイト 参考↓

http://matome.naver.jp/odai/2131591487111662601

ジンテーゼのジン

ダブルミーニングであり、同時にハンターハンター第1話の時点で、蟻編ラストまでの構想はある程度決まっていたのだろうと推測できます。他にも、ドラゴンボールとの様々な類似点などが根拠に挙げられますが、長くなるので割愛します。

余談ですが、パワーストーンであるジンカイトが生まれるきっかけとなった突発事故が「神さまのいたずら」と呼ばれているのは興味深いですね。

 

 

次に、メルエムの話。

NGLという隔離社会で入念に育てられ、様々な生物の進化の突端として生まれ、コムギとのやりとりによって成長したメルエムは、間違いなく最強のキャラクターでしょう。ハンターハンターほどリアリティラインの高さを持つ物語で、おそらく論理的にこれ以上強いキャラクターは生み出せません。彼に対抗できるのは、人類の科学(論理)、そして悪意の結晶である悪魔兵器だけでした。

 

念能力もそうです。

念には、人間の限界を超える能力にはできない、という縛りがあります。制約と誓約を使えば限りなくそれに近づけることはできますが、リスクもちゃんと設定されています(それでいて、世にあるバトル漫画の超能力や魔法や霊能力など、あらゆる空想をカバーできる設定というのがまた凄いですね)。

 

色々と書きましたが、何が言いたいかというと、ハンターハンターって本当に論理的にできてるよなぁという話です。

 

 

しかし、選挙編に入り、その様相は一転します。

 

 

アルカ(ナニカ)の存在です。

彼女は(キルアの命令限定ですが)ノーリスクで願いを叶えることができる、念能力(論理)を完全に超越した者として描かれます。

くどいようですが、ハンターハンターのリアリティラインにおいてメルエムより強いキャラクターなんて論理的に生み出せないんですね。そうなると次のテーマは、論理を越えたものになります。

 

ハンターハンターという作品は、蟻編以後新たなる境地を描こうとしています。

 

蟻編までは、論理に支配された、説明可能な世界です。

蟻編以後は、非論理的で説明できないもの、不条理で、ホラー的で、クトゥルフ的で、レベルE的で、諸星大二郎平山夢明の作品のようなものに、論理はどう立ち向かっていくのかという話になりそうです(そういう意味では非常に震災以後的ですね)。

 

言い換えれば、狙った通りに獲物が動く(論理)ことをハンターの醍醐味としたジンが、人間の論理を越えたものをどうハントするのかという話でもあります。ジンがメタ的な立場から、いちプレイヤーとして物語に参戦するようになったのは、そういう意味で必然と言えます。

 

 

…まあまだ暗黒大陸に上陸すらしてないので全然分からないですけどね。おそらくナニカの正体はガス生命体アイでしょうから、アプローチできるものもある、ということは確かですが…。

現時点で言えるのは、念能力のカバーの広さといい、相変わらず冨樫先生のプラットフォーム設計は素晴らしいなということです。暗黒大陸で描けないことなんてないんじゃないですかね? SFすら描けてしまいますよ。

 

 

いつもながら結論は特にないですが、好きなように書いてみました。

 

冨樫先生! 連載再開楽しみにしてます!!!(血の涙)