『インターステラー』についての所感・星間の距離と愛の距離
クリストファー・ノーランの映画「インターステラー」が死ぬほど面白かったので、色々とまとめます。自分のためなので、申し訳ありませんが好きなように書きます。
※引用多いです
※ネタバレありです
まずは、基礎知識として。
町山智浩さんのザックリした解説。
そして僕が最も共感した呟き。
ぼくたちは、選挙なんてどうでもいいから、神とか愛とかについて考えたいんだよ。そういう人間はこの国にもたくさんいるのに、「そういう連中は社会不適合者、選挙いくのがまともな大人」とかいって片付けるから、政治の質が下がるんだよ。そういうこと本気で言うのが大事だと、最近は思ってる。
— 東浩紀 hiroki azuma (@hazuma) 2014, 11月 24
というわけで、社会不適合者の僕は、インターステラーと愛について考えていきたいと思います。
インターステラーは徹底的に愛についての物語です。
クーパーとマーフの親子愛はもちろんですが、僕はラストが象徴的だと思っています。
「マンの星の話いらんかった気がする」とは、一緒に観に行った友人の意見です。言ってる意味は分かります。しかしインターステラーは、クーパーがマンの星に行くことを選ぶという失敗を描かなければならなかった。なぜか。
中盤、マンの星とエドマンズの星のどちらに行くか議論になるシーンがあります。アメリアはエドマンズの星を推しますが、クーパーは恋人がいるからだろうとアメリアの意見を一蹴します。ここのアメリアの反論が良かった。愛が理由じゃなんでいけないの?ってのを科学的に説明しようとするんですよね。もちろんクーパー達にはオカルトにしか聞こえないので、彼女の意見は却下され、マンの星に行くことになります。
けど結局、マンの星で得たものは何にもなかったんですね。むしろ死にかけたり、貴重な時間を浪費したりしてる。
そしてラスト、エドマンズの星で一人佇む彼女は、宇宙服のヘルメットを外し、なんとプランBまで実行している。完全に人間の住める環境の星だったわけです。
マンの星を選んだという失敗が、アメリアの意見が正しかったんだよということを強調するための伏線になってるんですね。(もちろん、あの時点でエドマンズの星を選んでたら、人類は重力を克服してなかったかもしれませんが)
アメリアの意見。愛。愛とは何なのでしょうか。あらゆる宗教家や哲学者が語る、壮大すぎるテーマですが、逃げずに考えてみたいと思います。
※ここからはインターステラーについて読みたい人は退屈かもしれませんので、どうぞブラウザバックして下さい
まず、愛には2種類あると便宜的に仮定させていただきます。
田中ロミオ信者である僕は、アメリアが愛について語るシーンで真っ先に思いついたのが、KeyのゲームのRewriteでした。ざっくり言うなら、「共同体存続のために人類にプログラムされた生存戦略」といったところでしょうか。伊藤計劃の「ハーモニー」とか読んでたらすっごい分かり易い話ですね。これが、1つ目の愛についての定義。
この先ほどからの一連のシーンは、高次元な存在である箒という少女が描いている生命の理論を、人間である瑚太郎が人間であることを捨てながら読み解いていく場面です。彼は、宇宙に存在する様々な理論や複雑な事象を観測したのち、唐突に愛に出会います。一言で言うなら「人間の認知を越えた、大きくて優しい何か」これが2つ目の愛の定義になります。
もちろん2つの愛は繋がっていて、観る立場によって姿が違うだけだと思うのですが、アメリアがあの場面で語った愛は、間違いなく後者に近いものです。なぜなら、僕らの理屈で語ってなかったから。だからクーパーも拒否した(理解できなかった)。
僕の知る愛の基本は自己犠牲、要は利他性です。しかしそれは1つ目の愛の定義にアッサリ包摂されてしまうし、何よりアメリアの直感を説明できない。
インターステラーに限定して考えるなら「パパが帰ってくるって約束したから」、それを信じ続けたことがあの物語の本質で、それが愛だ…なんて説明もできるんですが…。
この記事では「直感的にそうすべきと思ってしまうこと」というふうに暫定的に愛を定義しておきます。読んで下さった方には、深いようで浅い内容で申し訳ない。精進します。
けどなんだか、愛について考えれば考えるほど、僕と愛の距離は遠のいていく気がします。
以下、雑感と細かい感想
・2001年宇宙の旅では人類をスターチャイルドにまで導いたモノリスが、インターステラーではTARSとして友達みたいになってたのが面白かった。HALとの対比もなかなか楽しい。タイムワープの映像の対比も
・事象の地平線は元来人間には絶対描けない映像なわけで、そこを「無限に続く娘の部屋」で表現したのはほんと素晴らしいですね。3次元で干渉できるように、クーパー自身が作ったからそうなるわけですね
・マーフが死に際に「子供の死ぬところを親が見るもんじゃないよ」って言ってクーパーを追い出したところは最高でした。マーフはクーパーよりずっと成長してるという描写。インターステラーはマーフのビルドゥングスロマンとしても見られるわけですね
・謎①、トムが畑を燃やされたあとにマーフに抱きしめられたとき、なぜマーフを殴り返さなかったのか(笑) それほどトムも父を愛していたから、てのは説明として妥当なんですが、個人的にノーランっぽくないなぁと
・謎②、ラスト、そりゃクーパーがアメリアを助けに行くのは分かりますが、なにゆえクーパーが目覚めるまで誰もアメリアを救出に行かなかったのでしょう? 既に誰か出発してるけどまだ着いてないだけで、クーパーも我慢できずに助けに行っただけ?
・日本のオタク文化、主にセカイ系との酷似点が面白い。東浩紀さんなんて「AIR」だ、て言い切ってたもんね。物語の構造やテーマが凄くエロゲっぽいですね
・苫米地英人著「苫米地英人、宇宙を語る」の文脈で愛についてかなり説明できる気はしたのですが、自分で考えてみたかったのでやめました。もし宇宙や哲学に興味ある方は、最高の名著なので是非読んでみて下さい
最後に、黒瀬陽平さんの呟きを。
ノーランにやられっぱなしでくやしいので、冨樫先生がんばってください!
— 黒瀬陽平 (@kaichoo) 2014, 11月 28
完全に同意。