雑感1・とあるゴーストとの対話
「……。」
『ガッチャマンクラウズインサイト』についての所感・愚劣な博愛主義者の救済、インサイトする猿にもう1つ必要なもの
山田詠美著「ぼくは勉強ができない」という連作短編の中に「◯をつけよ」という物語があります。僕が中学時代、最も影響を受けた小説です。
少し引用します。
「(テレビのワイドショウでコメンテーターが人殺しを糾弾しているシーンで)けれど、ぼくには、何故多くの主婦たちが、これらの番組に夢中になるか解るような気がする。ここに取り上げられる話題と来たら、すべてが、本当は自分の価値観でどうにでもなることだからだ。けれど、自分の確固たる価値観を持つのは難しい。多くの人々は、それらが本当に正しいものであり得るのか不安に思っている。そこに他人の言葉が与えられることで、彼らは、ある種の道標を与えられる安心を得るのだ。
(中略)ぼくは昨日のテレビ番組を思い出した。子供を殺すなんて鬼だ、とある出演者は言った。でも、そう言い切れるのか。彼女は子供を殺した。それは事実だ。けれど、その行為が鬼のようだ、というのは第三者が付けたばつ印の見解だ。もしかしたら、他人には計り知れない色々な要素が絡み合って、そのような結果になったのかもしれない。
(中略)ぼくは、ぼくなりの価値判断の基準を作って行かなくてはならない。忙しいのだ。何と言っても、その基準に、世間一般の定義を持ち込むようなちゃちなことを、ぼくは、決してしたくないのだから。ぼくは、自分の心にこう言う。すべてに、丸をつけよ。とりあえずは、そこから始めるのだ。そこからやがて生まれて行く沢山のばつを、ぼくは、ゆっくりと選び取って行くのだ。」
これがギリシア哲学者アルケシラオスのいうところのエポケー(判断保留)であったり、フッサールの現象学でいうところの「カッコに入れる」であったと知ったのは、大学に入ってからでした。そんなものを中学生のクソガキに読ませる山田詠美すげぇ!と当時感心したものです。
…で、言うまでもなく、ガッチャマンクラウズインサイトのメインテーマはこれですね。
カッツェの言葉を借りるなら、「みんな自分が正しいことをしてると思い込んでる」から、もっとインサイトしろ。
これについては正論過ぎて突っ込みどころがないのであまり触れません。毎日どこかで炎上してるネット界隈や、右傾化する今の日本に、思うところがあったんでしょうね。
僕がインサイトで注目したいのは、ゲルサドラという個をどうやって救済するのかという問題です。
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クラシックを聴かない人のためのおすすめクラシック入門10選・オーケストラ編
とにかくクラシック音楽の敷居を下げたいという一念で書きます。
この記事に向いてる方
・クラシックを聴きたくてモーツァルトやバッハを聴いてみたけど、いまいちハマれなかった方
・クラシックって長いし眠くなるから、邪道でもいいから美味しいところだけ聴きたいという方
・綺麗なハーモニー、というよりキャッチーなメロディやノリノリなリズム、重厚で派手な音楽が好きという方
・クラシック音楽なんて聴いたこともないから、とにかく聴いてみたい方
以上に当てはまらない方はブラウザバック推奨かもです。
平たく言うと、普通のポップスを聴くノリでクラシックも聴いてもらえたらなぁという感じです(曲自体はかなり重たいですが)。
選曲、演奏団体は完全に趣味です。
ではどうぞー。
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『人類は衰退しました』についての所感・人間の証明、世界を調停する力
定義とは差異である。
区別する、分類する、名前をつける、何でもいいのですが、要するに抽象度の1つ高い場所から、世界をカテゴライズすることです。
例えば僕は関西人ですが、抽象度を上げると日本人、地球人、宇宙人となっていき、逆に抽象度を下げると〇〇県民、〇〇市民、〇〇家となっていきます。
よって僕はアメリカ人ではなく火星人ではなく宇宙外生命体でもなければ、隣の県民や市民、隣人ではないことが分かります。これが差異というものです。
同時にそれは、人が「~は~である」と言うとき、宇宙にある何かとの関係性でしか語れないことを意味します。地球に人間しか生命がなかったら、人類や哺乳類なんてカテゴリー必要なかったでしょう(生命の定義すら危ういですが)。
さて、なぜこんな当たり前の前置きをしたのか。
それは、田中ロミオ著「人類は衰退しました」という小説が、人類史をパロディ化しつつ、生命の定義を拡張し、人間を再定義した物語だからです。
※ネタバレあり
※主に9巻についての話になります
続きを読むおすすめマンガ10選
約半年前に書いたおすすめ漫画の記事があるんですが、
そっからも順調に開拓し続けてまして、やっぱり世の中には僕の知らない面白い漫画がたくさんあるなぁとつくづく感じています。
そんなわけで、前回の記事を書いて以降に出会えた面白い漫画を、計10作品、紹介していこうと思います。
一応前の記事のルールを引き継ぐということで、前回登場した作家さんは登場しません(ですので、正確には面白い作者さんを紹介していく記事かもしれません)。
そんな有名ドコロ読んでなかったんかい! というツッコミはなしで、お手柔らかにお願いします。m(_ _)m
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